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ある日、人間が異能を使えなくなった。
突然のことに多くの人が動揺したが、マリア大佐の一言によってナカベの人々は一応の平静を取り戻した。
しかし、ナカベは中佐二人が人間であり、主力二人の戦闘能力が大幅に削られてしまったのも事実。
他の地区がどうなっているかは分からないが、幾ら内密にしたところで、敵国であり陸続きになっているキンキ地区の者に異変を感知されるのは時間の問題だ。
そう予測を立てた仁はすぐに国境の警備を固めることにした。
異変があったのはその夜。仁が偵察を行っていると壁に開けられた穴から人が出てくるのを見つけた。
「おーおー、予想通り!この期に乗じてって考えなんかなぁ。たーけ共がようさん来とるわぁ」
壁で固まってなにやら話をしている人々。
「しかしまさか、教団事件の時壊れた場所を通ってくるとは……。君らホント脳なしなんか?」
少し前、ある教団に関する事件が起こった現場。マリア大佐はどうも敵の大佐とドンパチやってきたらしい。
仁も征圧に参加し、その本拠地を遠距離から破壊するなどしている。
その事件の時に壁に穴が開けられたのだ。
仁は復旧工事を担当していなかったため詳細は把握していないが、未だ仮補修の段階であったのか、一度壊された部分のためもろくなっていたのか。
とにかく、それと同じ場所に穴が開けられていたのだ。
「壁の修復工事現場付近に侵入者確認だ。警戒を強めろ。敵の姿を確認できてるやつは全員銃構えときぃ」
散りじりになって警戒をしている部下達に通信機器を通して指示を出す。
(人間がおらんな。もしかすると、これはナカベだけでなく西も異能が使えん可能性も……)
散開の指示が出たのか侵入者が散らばっていく。
「お前ら、ちゃんと当てろよ!発破!」
複数の銃声が冬の夜空に木霊した。
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