東の番犬

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一度人類が滅びた世界。 ニホンは西と東に分かれて戦争をしていた。 ナカベはちょうど東大帝国と西国連邦の境にあり、それゆえに東西の小競り合いが頻繁に勃発する地域でもある。 東大帝国ナカベ少佐・仁の部隊の主な任務は不法入国者の対処だ。 物陰に潜み、愛用銃のスコープを覗いていつ現れるか分からない敵を警戒する。 「少佐」 「ん?」 そんな中、部下の青年の一人が声をかけてきた。 「どうした?敵か?」 「いえ、少しお尋ねしたいことがありまして。前々から疑問ではあったのですが、その、少佐は何故そのような旧式の武器をご使用なさっているのかと。」 確かに、仁が使用しているのは旧式の狙撃銃だ。それも、滅亡以前のものである。 そのような疑問を持つものが居ても不思議では無い。 しかし、それを聞くと仁は何かを思い出したような表情をして、口元を緩めた。 「ああそれはな、俺をコケした奴らを奴らがコケにしたモンで見返してやるためだよ」 分かるような分からないような説明に青年は少し困惑する。 「分からんでいい。ただこれが俺を救ってくれたあの人の言葉で、俺の戦う意味なんだ」 「あの人って……」 誰ですかと続けるはずだった口を、突然仁の人差し指が塞いだ。 「しっ!静かに。ようやく敵さんがいらっしゃったわ。さて、今日はどんな手段を取ってくんのか……」 仁は笑みを浮かべる。先ほどとは違った"殺戮者"の笑みだ。 仁は青年の口元から指を離すと銃を構え、 「ま、そんなもん見せてもらう前に」 スコープを覗き、 「君はこの世から永久退場だ」 躊躇うこと無く引き金を引いた。
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