題名 ストロベリー・アイ

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時間にルーズ過ぎて相手を怒らせて破局する。そんな儚に合わせられる人間など数えるほどだ。それを良いことに私は今日も儚の淡い桃色の髪を触る。男にはこのさわり心地はわからないだろうし、私の気持ちもわかりはしない。儚は髪を背中を撫でられて、嬉しそうに胸へと頬を押し寄せる。まるで、猫か犬のよう。無防備過ぎるワイシャツの第一ボタンを外したくなる。 私が想うことは一般的なものじゃない。儚の名前そのものだ。それでも理屈では説明できない。妙なものに萌えるのと同じなんだ。萌えを理詰めで説明を求められても正直困る。私が儚を好きな理由も「好きだ」の三文字でいいじゃない。こんなこと考えても胸がきりきりするだけ。頭がもやもやするだけ。側にいたいだけじゃ説得に欠けるのかな。 「違うもん。あっちが悪いんだもん」 何時ものように頬を膨らませて、何時ものように抗議して、私に飽きるとまた直ぐ男を作る。 ――女はだめ? 聞きたくなる気持ちを抑えることに限界ってある。タイミング、要はタイミングなんだって言いわけしてる。 ――別れた男となにしてた? 会話にしてみれば私が意地悪しているような気分になる。私の知らない儚を見てみたい。そんな欲求が溢れてくる。 私は擦り寄る儚を抱き締める。 このまま、時間が止まればいい。 このまま、儚を帰したくない。 想いを告げたら終わりそうだ。 この背徳を消し去りたい。 嗚呼、神様、お願いです。 受け入れたひとつの答えをお許しください。 否定することなんて私にはできません。
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