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「儚、いま彼氏はいるの?」
「いないよ。スナオがいるから平気」
「儚。私と付き合って?」
「ん? スナオが良いならいいよ。だけど嬉しいな。私から言おうと思っていたのに」
私の唇を恥ずかしげもなくかっさらって、ストロベリー色の瞳で見詰めてくる。
私といえば――このゲンジツに暫く、言葉を失った。
「でも、よかった。スナオも私と同じで」
息が止まる。心臓が跳ねるって言葉を知った。
同じ。そう、同じ。
言葉を機械的に繰り返して、意味を認識する。
私はぎこちなく頷いた。
「たくさん男のひととつきあったけれどスナオみたいに抱き締めてくれるひとひとりもいなかったんだ」
儚の照れる仕草が間近にある。
上目遣いの瞳と覗く笑窪。
フリルの付いたパステルカラーの膝丈スカート。圧底のローハー。キャミソールに薄いカーディガン。頬を控えめなチーが彩る。御揃いの豹柄スカーフで首筋を飾る。
私とは正反対の女らしさ。
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