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「い、いたいっ」
「我慢して下さい」
「だって……痛いんだもん」
「先輩がランニング中、転けちゃったんだから仕方ないでしょう」
「だって~……」
瞳に涙を貯めて抗議しても耳を傾けてくれる様子はなく、黙々と続けられる治療。
「……痛いぃぃっ」
体をつんざくような痛みに耐えられず、思わず足をジタバタと動かした。
「先輩」
地を這うような低音が耳に届いて、顎を引き口をすぼめながら声の主を見上げると。
パイプ椅子に腰を下ろしているあたしの前で、膝を折り曲げているフミと視線が絡んだ。
眉間に深く皺を刻み目を細めていて、その姿はまるで般若さながら。
あまりの恐ろしさに、肩がビクッと上がった。
「言うこと聞いて下さい」
「……はい」
首を上下するしか、他に選択肢はなかった。
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