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あたしは大人しく転んで擦りむいた膝を差し出し、フミが持つ消毒液を含むコットンを迎えいれた。
い、いた、いたいっ!!
ダイナミックに転んだ時に生じた傷はかなり深く、そこに消毒液が滲んだときの痛みといったら。
でもフミへの恐怖心から、口には出せず足も動かせず。
両手で震える右足を、必死に押さえることしか出来ない。
「フミ……まだ?」
丁寧にやってくれるのは有り難いんだけど、痛さには勝てず。
息を荒くしながら、そう尋ねた。
「ちゃんと手入れしておかなきゃ、後々跡が残っちゃいますよ?
女の人なんだから、しっかりしておかなきゃ」
フミはあたしの傷口を眺めながら答える。
「……女、かな。あたし」
思わず。
そのワードに反応する。
途端に大人しくなり目を伏せたあたしに、フミは疑問そうな視線を投げかけてきた。
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