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「あいつ、何して過ごしてるんだろうな」 「さぁな。勉強じゃねーの?…まさかバイトはないだろうし」 「だな」 「あぁ。しかしあちーな。エアコン入れろよー」 夏休みという自由を奪われ、誰だって小さな文句の1つも言いたくなる。 それでも普段のように6時間みっちりではなく、午前中で解放されはするからまだいいだろうと自分に言い聞かせた。 夏の間中柴田に会えないかと思うと、強引にでも携帯番号を聞きだせばよかったとか、家まで探っておけばよかったとか、よからぬ思惑が出てくる。 「…今さらだし」 「何が『今さら』だ?」 心の中で呟いていたつもりの言葉はしっかり口に出ていた。 しかも、古文の補習中に。 「あー…スミマセン」 あーあ、と笑いかけるにやけ顔と、何やってんだっていう冷たい視線の入り混じる微妙な空気の中、照れ隠しがてら窓の方にそっと顔を向け真夏の真っ青な空をふいっと見た。 吸い込まれるくらいに深く澄んだその色。 今年も夏が来たな、としみじみ思う。 楓を置き去りにした夏が。
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