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僕も矢野も両親や兄も、お互いにそういう話をしたわけじゃない。
でもお互いを見ていて思うんだ。
楓がいた証を守ることにただ必死になってるから。
あの部屋をまっさらにしないのも、楓の写真を飾っておくのも、そこにいたことをちゃんと自分の中に留め置きたいから。
必死に今を生きてたら流されてしまいそうになるから。
いなくても平気になってしまうことに慣れたくなくて、そういう自分を認めたくなくて。
それじゃあ困るんだって自分に足枷を嵌めることで、きれいな形にしておきたいんだ。
お前がいたから今の僕が、僕たちがあるんだって思いたいんだ。
これって自己満足なのかな。
前を向いて歩けとか、後ろは振り返るなって言うけど、そんな簡単じゃねぇよ。
どうしたらいいんだよって、行きつく先でいつも迷ってる。
立ち止まれないけどそんなスイスイ先にも進めない。かと言って後ろには戻れない。
本音を言えば、僕らはずっと苦しいまま。
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