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「忘れてた」 そう言うと矢野は顔をしかめて画面を見つめた後で電話に出た。 「もしもし?あー…わりぃ。忘れてた。…今から行くから待ってて」 すぐに電話を切ると、僕と橘に向かって矢野は言う。 「俺、ちょっと用事あるからここで抜けるわ。じゃ」 「「は?」」 あまりにも唐突な事態に僕と橘の声が重なる。 残っていたアイスを口に放り込むと、矢野はビニール袋とカバンを手に、じゃあな、とだけ言って僕らに笑った。 そうして背を向けると、公園の入り口の脇に停めていた自転車に向かって走り出す。 …あいつ。最初から― 「…あー。行っちゃった」 橘がポツリ、そう言う。 残された、僕と橘。
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