4

18/47
前へ
/612ページ
次へ
「嘘だよ。さすがにそこまではできない」 ふっと笑って橘は握り潰したカップの方に視線を戻す。 「……柴田のこととなると、なかじはー」 もう、と小さくため息をついた橘は立ち上がると、言葉を続けた。 「なかじにしか話してないし、他の誰かに話すつもりもないから。 でも、耳のことは間違いないと思う」 じっと真っ直ぐに僕を見つめるその視線が言う。 嘘ではない、と。 僕らを包む真夏の気だるい空気を切り取るように、ハッキリと。 「イヤホン、私が引っ張って壊したの。あの日。…だから怒って私のバッグ投げたんだ。 その時は気にも留めなかったんだけど、あの時―」
/612ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1801人が本棚に入れています
本棚に追加