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「…よく続くよな」
呆れたように、でも決してバカにはせず矢野は言った。
あれから僕は毎日補習が終わると羽田に立ち寄った。
もう10日以上になる。
暦はいつの間にか8月に入り、朝からうだるような暑さの日が続いていた。
自宅とはまったく逆方向な上、自転車だけで行くには距離がありすぎる。
行き帰りの時間だってムダになる。
行けるとこまで自転車で行き、そこから先は電車を使った。
小遣い制の高校生にはわずかでも痛い出費だ。
それでも、諦めたくなかった。
「焼けたな」
炎天下、わずかな距離でも自転車で立ち回ればその熱の恩恵を受ける。
「…格好よくなった、だろ?」
僕がそう返すと、矢野はいつものように清々しい顔をして笑った。
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