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居座ることに慣れてしまうと、ここは案外快適な場所だと気づく。 涼しいし景色はいいし長居しても迷惑がられない。 周りの声もそこまでうるさいわけじゃない。 あの頃は賑わうロビーで人の流れをぼんやり見つめていたけれど、今はこの展望室で、来るか来ないかわからない待ち人を静かに待っていた。 ファミレスやファーストフード店よりもずっと居心地がいいじゃないかとそんなことを思いながら。 カバンの中から取り出した文庫本。 集中しすぎると人の出入りを見失うからほどほどにしつつ時折顔を上げた。 僕なりに考えはあった。 柴田は、人の多い土日にわざわざ来るようなヤツではない。 学校帰りに立ち寄るくらいだ。 現れるとすればきっと平日の夕方頃だろう、と。 その時間帯を狙ってここにやってくる人をこの10日間ほどじっと探っているけれど、やはり柴田が現れることはなかった。 夏休みだもんな。 そんなことを思いながら再び手元の本に視線を落とす。
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