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「…お前見てると、思い出すんだ」
2人だけになってしまった屋上で、中嶋はそう言った。
誰に、と聞かなくても、しばらくしてから言葉は続いた。
「妹がいたんだけどさ。同じ年の」
いた、という過去形でそれなりのことを悟った。
あぁ、だから彼は。
いつもどこか遠くを見つめていたんだと、その一言で察知する。
きっと飛行機に乗れないことも関係しているんだろうと容易に想像がついた。
そういう話には疎い方じゃない。
双子の妹か、とその姿をぼんやり思い描こうとしたけれど、うまく形にはならなかった。
「変わり者でさ、最期までよくわかんなかった」
ははっと笑いながら言う彼の横顔は、深い青をまとった空を見つめていた。
じっと、ただまっすぐに。
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