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窓側から2列目、1番後ろの席。
いつものようにどっかり座りながら、窓の方に背を向ける。
窓側から3列目の1番後ろにやってきた矢野(やの)とやはりいつものようにくだらない話をしながら、背中では気配を探っていた。
窓から入り込む春風が心地よく髪を揺らした、まさにその瞬間。
「おい、中嶋(なかじま)」
いつものように、背後から声がかかる。
来た来た。来ましたよ。
にやけ顔にならないよう、努めて冷静なふりをして顔だけを後ろに向けた。
「何?」
「邪魔」
秒殺かと思われるほどのタイミングで棘のある声が返ってきた。
真っ直ぐに見下ろす冷めた視線が、痛みを通り越してむしろ快感。
「はいはい、どきますよ」
座席と教室の後ろの壁との隙間を塞ぐように座っていたのは、わざとだ。
いい加減気づいてもいいと思うんだけどな。
そんなことを心の中で呟きながら、座っていた椅子を少しだけずらす。
ギリギリ1人分が通れるだけのスペースを作ると、チッと小さな舌打ちが聞こえた。
そこをスッと通り抜けていく気配。後ろ姿。
あんまり見つめすぎない程度にそっと目で追う。
「柴田こわっ」
一緒に話していた矢野がおどけながら小さな声でそう言った。
「聞こえるって」
「イヤホンしてんだから、平気だろ」
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