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教室の後ろの出入り口から出ていこうとする柴田。 耳からは白くて細いコードが制服のポケットに向かってつながっている。 柴田は授業中以外、ほとんどイヤホンをつけている。 それでもああやってフツーに何か言ってくるから、たぶんこちらの声もほとんど聞こえているんじゃないかとは思うのだけど。 矢野の話に適当に相槌を打ちながら、視線は柴田の後ろ姿を捉えていた。 廊下を進んでいく横顔は、さっきと変わらずやけに傲慢そうだ。 昼休みのにぎやかな喧騒の中で、あいつの周りだけが切り取られたみたいに浮きあがってる。 高2になって初めて同じクラスになった柴田優(しばた ゆう)。 あいつが、噂通りの変人であることに間違いはない。 僕の人生に強烈なインパクトを与える彼女は、これまで出会ってきたどんな人よりも圧倒的に僕の中でその存在感を強めていた。
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