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「中嶋ー!今日…」
「わりぃ。用事あるんだわ、今日。じゃあな」
素っ気なくそう返すと、視線を元の方向に戻した。
帰りの喧騒の中で、僕は少し先にある後ろ姿をちらりと伺っていた。
…が。
くそっ。見失った。
矢野の声になんか応えるんじゃなかった。
廊下をにぎわす同じ制服の群れの中に、さっきまでの姿はない。
いれば見逃すはずがない。
自慢の裸眼1.5で長い廊下のはるか先まで見渡しても、いない。
何なんだ、あいつ。
…そうだ。玄関。
思い立って、僕の足は玄関の方へと進む。
これでもう帰ってたら、ホントに何者なんだよって話だ。
放課後の校舎内のどこかのんびりとした空気の中を、僕だけがあくせくと過ぎていく。
どうしたって諦めきれないから。
こうなったら、強行突破するしかない。
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