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ココロが訊くと、ツバサは小瓶を両手で握ったまま首を横に振り、こちらを睨むだけだった。
ココロはそれを確認すると、再び歩き出す。
校舎に向かうまでの間、カンナがココロに訊いた。
「い、いいの? 3匹いれば、絶対勝てるのに」
「……賭けの後のこと考えたら、もう少し時間が欲しい。やるなら放課後のほうがいい」
「賭けの後? どういうこと?」
「少し、あのセンパイに話を聞きたいのと……まあいろいろ。それより、カンナは平気?」
「え? 何が?」
ぽかんとするカンナの顔を見つめて、ココロは何故かホッとしたような顔をした。
次に、ココロはカンナの髪を優しく撫でた。
「待ってな、すぐにあの虫を取り返してやるから」
カンナはどこかうっとりした様子でココロを見つめ、言葉を発することも、頷くことも、忘れていた。
……けど、マイは騙されない。
一匹につき5000万円の幸運を呼ぶ虫。ココロは1億5000万円相当の幸運を手に入れたんだ。そうやすやすと手放す訳がない。
ココロの後ろ姿を強く睨む。そのときのマイは、もう既に、静かに諦めていた。
……虫も、新しい友情も、ここでお終いだ。
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