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数十秒の沈黙の後、「……君だけは守った」
そう言った瞬間、心路のビンタが、国生の頬を叩いた。
彼は悲しい瞳で心路を見つめると、こう言った。
「君がこの膨大な数のエキゾチカを手に入れたとき……僕は君の人生から不必要になる」
その発言で麻衣は思い出した。
──かつて、心路の青春の安息は国生一色の存在のみだった。
しかしエキゾチカと出会い、彼女は奏那、麻衣、津葉佐というトモダチを得た。
それによって、国生という心の支えがじょじょにいらなくなっていた。
当時の彼女に必要だったのは、あるいは心から求めていたのは、背伸びした恋愛ではなく、互いを罵倒し成長し合う──親友だった。
「先生は……心路を引き留めるために……エキゾチカを奪ったの……?」
麻衣の呟きと同じことを、心路も気付いていた。
国生はそっと、心路の頬に触れた。彼女は拒否せず、ただじっと、恐ろしく冷たい目でかつての恋人を睨んでいた。
その静かな視線は、青虫が葉を喰い散らかすように、彼の心を蝕み、暗い感情を広げさせた。
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