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そこへタイミング悪く?山科が営業から帰って来た。
「あれっ?社長?ど、どうしたんですか?珍しく負のオーラ背負っちゃって。何かあったんすか?」
俺は伏せたまま、
「山科お前、来週死のミッションを受けることになるぞ。今のうちに息吸っとけ」
「は?なんすかそれ?じゃ俺帰りますよ?お先に失礼します」
相変わらず軽い調子で訳の分からないまま立ち去る山科にもうそれ以上は気の毒で言えなかった。
店の電気を落とし鍵をかけてネオン街を歩いていく。
今夜は考え事をしたくなくて“Robin”のドアを開けた。
「きゃあイズミンいらっしゃーい」
House musicの流れる店内に甲高い声が響く。
華やかなドレスの間をすり抜け、俺はカウンター隅のいつもの席に座って
「セリカちゃん、テキーラちょーだい」
と声を掛ける。
この店ではバーテンダーの二人以外は…みんな"男"だ。
赤く染めたショートカットが良く似合うセリカちゃんがテキーラのワンショットグラスとチェイサーを俺の前に置いた。
「いきなりテキーラなの?ご機嫌ななめね。イズミン?」
隣に座り、俺にしなだれかかってくるのは、この店で唯一俺よりでかくて、ガタイのいいジョーイだ。
今夜は、銀色の背中の開いたドレスを着て、ボブカットのウィッグをつけている。
「ねえ、この間の、ほら、きれいな子早く連れてきてよ。会いたいわー。もうタイプなのよ」
「無理。あれは俺のだから」
「えーっ、あの子ストレートだと思ったのにイズミンいいなぁ」
この前やっぱり心配になってあの公園に行くことにしたが、念のため軍隊経験のあるこいつを連れてった。
その時見た笙さんの事をジョーイは気にいったようだ。
しかし、笙さんには俺がいる。
たとえ相手にされていなくとも俺の笙さんへの気持ちは揺るぎはしない。
俺たちみたいな人種は報われないことに慣れている。
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