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「で、なんで機嫌悪いの?」
ジョーイは勝手にワインを頼み、テキーラを飲み干した俺にグラスを渡して自分のグラスをカチンと合わせた。
俺は何も言わないままそれを飲み干す。
「梢ちゃんが3日休むんだ」
ジョーイは俺のグラスにワインを注ぎながら
「梢ちゃんだって休み位取るでしょ。むしろ普通じゃない?旅行かしら?いいわね」
俺はまたグラスのワインを飲み干す。
「それが、お見合いだと」
ジョーイがワインを注ごうとした手を止めて目を丸くした。
「まあ、あの冷血女が見合い?どういう風の吹き回しかしら?」
「親に泣きつかれたんだろうと思う。あいつはああ見えて家族思いらしいし。母の日やら父の日やらイベントごとに宅配でなんか送ってる」
「へえ意外ねぇ。人は見かけによらないわ」
「見かけはいい女だろ?中身は鬼女だけど」
なんだか赤ワインが甘くて後味が悪い。
俺はまたテキーラを頼んだ。
「それでイズミンはなんで不機嫌なのよ。あの子が結婚して辞めればまた新しい子が雇えるじゃない?今度は可愛い男の子にしてよね」
「ジョーイ、それがダメなんだよ。仕事にあいつは必要なんだ。なんでもよくわかってて、実質俺の上行ってるし。どっちが社長かわかんねえ」
テキーラで喉が焼けるように痛くて思考がはっきりする。
そうだ。
うちにはやはりあいつが必要なんだ。
物件の事も顧客の事も役所に出す書類の手配もみんなあいつがしてくれてる。
…っていうかあいつ仕事しすぎだろ。
一人でも不動産屋できんじゃないのか。
今更ながら彼女の優秀さに舌を巻く。
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