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「あいつ看護師だったはずなんだけどなぁ」
俺のつぶやきにジョーイが反応する。
「えっなんか今夜衝撃的な暴露続きねぇ。あの子ナースなの。いいわぁナース。明日はジョーイもナースちゃんになろうかしら」
「あんたに合う制服ってあんの?」
横からカバ似のアイが口を挟む。
赤いフリルのドレスを着て、今夜も強烈なルックスだ。
「ふふん。以前特注で作ったんだもん。ピンクのミニよ。イズミン楽しみにしててね」
俺は明日だけはここには来ないと心に誓う。
俺の手の中にはいつの間にかウイスキーのロックが渡されてた。
そうだった。
出会った時、あいつは看護師だったんだ。
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仲間に担ぎ込まれた下町の外科に彼女はいた。
「この傷ナイフですよね。先生、警察に届けないと…」
「いいよ。誰も殺してないんだろ?」
5ミリくらいの厚さがあるんじゃないかと思えるガラスレンズの眼鏡の小さい爺さん先生が俺の顔を覗き込むように見る。
「殺しちゃいない。まあ、俺よりは重傷だけど。奴もどこかで裏で治療受けてるさ」
「んじゃ。未成年だし、事件性はなしでよかろ。梢ちゃん、縫合セット持ってきて」
俺は上半身の服を脱がされ治療台に寝かされた。
爺さん先生は体を一通り診るとうつぶせになるように言い、背中の傷を確認した。
「傷は浅いが痛かったなぁ。チクっとするが我慢しろよ」
そう言って麻酔を傷の周りに打っていく。
チクってどころではない痛さがあって、生汗をかきながら俺は呻いた。
やがて痛みも薄れ、治療されているうち、眠ってしまった。
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