第4章

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「何かあった?」 そういえば、こうやって彼女と話すのは久しぶりだ。 課長と彼女が別れた日以来、会社以外で会うことがなかったから。 「何もありませんよ、何もないから……」 ここまで言うと、何かを躊躇うように口を閉ざした。 何もないから、の続きの言葉が気になったものの、これ以上詮索すると更に彼女の不機嫌度が増しそうなので聞くのをやめた。 その時、ホームに電車が滑り込んできた。 車内は混んでいて座れなかったので、扉の前に二人で立った。 「最近、やっと少し涼しくなってきたよね」 車窓の外に広がる青と白の空を見て言うと、彼女は俺の声が聞こえていないのか、無言で流れる景色を見ていた。
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