第4章

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この映画を見ている最中、千秋ちゃんには悪いが小早川さんのことばかり頭に浮かんだ。 あの日から彼女とは連絡を取っていない。彼女からの連絡も一切ない。 課長から彼女のことを宜しく頼むと言われたものの、社内でも彼女も課長もいつも通りだし、彼女の恋が終わるまで見守るという俺の役目は終わったのだろうという自分なりに解釈した。 最悪の結果にならずして終止符を打てたのだから喜ばしいことなのだ。 彼女には俺のように過去を引きずらずに前に進んで欲しい。 ――「お茶でもします?」 館内からロビーに出ると、千秋ちゃんが腕時計に目をやりながら言った。 「うん、そう……」 そうだね、と言おうとした時、今まで絶えず頭の中にいた人間が俺の瞳の中にリアルに映って思わず息が止まる。
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