飛沫

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 そこに、ウサコが薄絹を纏ったナイフを放った。  右手を軸に、セルが薄絹を絡め取る。  そして、そのまま薄絹を掴むと、力任せに薄絹を振り回した。 「きゃぁ!」  小さな悲鳴を上げ、宙を舞うウサコ。  無防備に身体を晒すウサコに、ティティが角を振りかざし勢い良く突進する。  しかし、ウサコは咄嗟に薄絹を放し、空中で身体を回転させ角を避けるると、軽やかに地に降り立った。 「うわぁっ! す、凄い!」  思わず感嘆の声を上げるティティ。  その傍らで薄絹を振り払ったセルに、扇明が鋭い刃を次々と繰り出す。  避けるものの、少しずつ増えていく浅い傷。  苛立ったセルが、遂に振り下ろされる刀に構わず、それを握る扇明の左手首を掴んだ。 「なっ!? 正気ですか!!」 「避けるのは性に合わねぇんだよ」  肩から胸まで鮮血を滴らせながら、牙を見せて笑うセル。  扇明の手から刀が滑り落ちる。  苦痛に顔を歪ませ、セルの右手を鞘で打ち据える扇明。  痛烈な一撃に一瞬セルの力が緩んだ隙に、扇明が左手を引き抜き、大きく下がった。  一方、華麗な身のこなしでティティの周りを跳び跳ねながら、拳を振るうウサコ。 「やぁぁぁっ!」
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