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「はぁっっっ!」
しかし、気配に敏感なティティの長い足がそれをことごとく防ぎ、ふたりの勝負は膠着状態に陥っていた。
セルと扇明が離れたのを見て取り、ウサコとティティも距離を取る。
互いに構える、4人。
そこに、ぽつっと小さな雫が天から落ちて来た。
アスファルトに作られたひとつの濃い染み。
「あ?」
セルが空を振り仰いだ瞬間、滝のようなスコールが凄まじい音を立て、降り始めた。
辺り一帯から悲鳴が上がり、人々がテントや軒先に走り込む。
4人も慌てて、近くの樹の下に飛び込んだ。
一瞬でびしょ濡れになった4人。
毛先から雨粒を滴らせながら、唖然とした表情で4人が互いの顔を見比べる。
しばし流れる沈黙。
「くっ……」
最初に肩を震わせたのは、セルだった。
「ぷふっ、あはははっ」
セルの声を聞いて堪えきれなくなり、ウサコが明るい笑い声を上げる。
次の瞬間、4人の笑い声が重なり、一気に膨らんだ。
戦闘の高揚感を引き摺っていたせいで嵌まってしまった妙な笑いの壺を抜け出せず、腹筋の痛みにお腹を抑えながら笑う4人。
先程までの緊張感は霧散し、そこにはただ、和やかな空気だけが満ちていた。
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