最強決定戦‐前編

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 そこに生まれた僅かな隙を、シルヴィアが捉えた。  唸る拳。  踏み込み、風を切って繰り出されたシルヴィアの重い拳が、沙羅の鳩尾にめり込む。 「がっ……はっ!」  胃液を吐き、吹っ飛ぶ沙羅。 「勝負あったな。よし、じゃぁ、次は、俺と戦ろうぜ!」  薙刀を支えに立ち上がった沙羅が、整った顔をほんの少し歪めた後、セルと場所を交代する。  盗賊たちの横を通りすがり様に、沙羅が薙刀で風を切り払うと、盗賊たちの集団が更に小さくなった。 「次は、貴殿だな。貴殿に勝てば、あいつらは私の獲物だ」 「勝てたら、な!」  シルヴィアのいち早い勝利宣告を鼻で笑い、セルが無造作にシルヴィアに向かって地を蹴る。  と同時に、シルヴィアもまた大地を駆け、ふたりの拳が交差する。  互いの頬を抉る拳。  そのまま、一歩も退かない殴り合いが始まった。  体重を乗せた拳の応酬は、みるみるふたりを傷だらけにしていく。  先に退いたのは、セル。 「貰った!」  シルヴィアの足が爪を光らせ伸びる。  次の瞬間、シルヴィアの足をセルの鋭利な尾が払う。  シルヴィアの体勢が崩れたその一瞬、距離を詰めたセルの拳がシルヴィアの頬を殴り飛ばした。
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