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そこに生まれた僅かな隙を、シルヴィアが捉えた。
唸る拳。
踏み込み、風を切って繰り出されたシルヴィアの重い拳が、沙羅の鳩尾にめり込む。
「がっ……はっ!」
胃液を吐き、吹っ飛ぶ沙羅。
「勝負あったな。よし、じゃぁ、次は、俺と戦ろうぜ!」
薙刀を支えに立ち上がった沙羅が、整った顔をほんの少し歪めた後、セルと場所を交代する。
盗賊たちの横を通りすがり様に、沙羅が薙刀で風を切り払うと、盗賊たちの集団が更に小さくなった。
「次は、貴殿だな。貴殿に勝てば、あいつらは私の獲物だ」
「勝てたら、な!」
シルヴィアのいち早い勝利宣告を鼻で笑い、セルが無造作にシルヴィアに向かって地を蹴る。
と同時に、シルヴィアもまた大地を駆け、ふたりの拳が交差する。
互いの頬を抉る拳。
そのまま、一歩も退かない殴り合いが始まった。
体重を乗せた拳の応酬は、みるみるふたりを傷だらけにしていく。
先に退いたのは、セル。
「貰った!」
シルヴィアの足が爪を光らせ伸びる。
次の瞬間、シルヴィアの足をセルの鋭利な尾が払う。
シルヴィアの体勢が崩れたその一瞬、距離を詰めたセルの拳がシルヴィアの頬を殴り飛ばした。
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