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「ぐはっ!!」
口端から血を流し、倒れ伏すシルヴィア。
「セル殿の勝ちだな。では、次は、私の相手をして頂こう」
身を起こし、セルを我を忘れたように見つめていたシルヴィアが、沙羅の言葉にはっとし、岩へと向かう。
血にまみれた牙を盗賊たちに見せつけ座ったシルヴィアに、最早盗賊たちは震える気力もなかった。
「次は、お前か。あいつに負けたお前が、俺に勝てるとでも?」
「セル殿こそ、その程度の怪我を、私に負けたときの言い訳になさらぬことだ」
愉しげに挑発したセルに痛烈な皮肉を返し、沙羅が薙刀を脇に身を低くする。
次の瞬間、地を這うように駆け出したセルに、薙刀を一閃する沙羅。
目前に光った刃先に思わずセルが身を引いた隙に、今度は沙羅が距離を詰める。
獲物の長さから有り得ないほど身を寄せられ、セルが警戒して尾を振るおうとした瞬間、沙羅が薙刀を素早く回転させ、柄で尾を打ち付ける。
その勢いのまま、柄でセルの顎を捉えると、がら空きになった胴体を蹴り飛ばす。
そして、倒れ込んだセルの喉元に、薙刀を突き付けた。
「参った……ちっ」
セルの言葉に、優雅に唇を弧型に描く沙羅。
これで、三者一勝一敗となった。
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