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「ちっ、皆、お高く止まってんなぁ」
西の王国の石畳の大路。
灼熱の太陽が石をじりじりと熱しているのをものともせず、裸足で歩くひとりのセリアン。
腰に緋色の布を一枚巻いただけのその男は、背後から突き刺さる好奇の眼差しを分厚い筋肉で跳ね返しながら、何故か男の前で左右に分かれる人々を見て、つまらなさそうに舌打ちをした。
「どっかに面白そうな奴いねぇかなぁ」
左右を見渡し、獲物を探す金色の隻眼。
その鋭い右瞳が、目の前から気の抜けた足取りで歩いて来るセリアンを捉えた。
男の眼前で瞼をさっと伏せる人々の中にあってただひとり、自然体のままのセリアン。
しかし、その身のこなしに隙は無い。
男が白い牙を剥き出し、にやりと獰猛な笑みを浮かべる。
そして、セリアンの行く手に立ち塞がると、酷薄そうな唇を開いた。
「よぉ、そこのお前。俺は、セルってんだ。なぁ、名前、教えてくれねぇか?」
「俺か? ラフ=ヴァルガス、まぁ……覚えなくても構わないさ」
威圧感を滲ませるセルとは対照的に、柳のようにその闘気を受け流すラフ。
「ラフ、だな。しっかり覚えたぜ。なぁ、ラフ、俺と勝負しようぜ?」
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