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セルの足が大地を踏み締め、身体を回転させながらラフに向かってしなる。
さっと大きく一歩後ろに下がってセルの右足を避けたラフの腹部を、次いで風を纏った尾が凪ぐ。
途端、ラフの服がナイフで裂かれたように切り開かれた。
僅かに見開かれるラフの瞳。
更に大きく、ラフがバックステップで距離を取る。
向き直ったセルの不敵な笑みに、ラフは苦笑いで応えた。
「その尾、俺のと違って厄介だな」
柔らかなラーテルの尾を持つラフが、セルの鋸のような尾を褒める。
「そうだろ? 自慢の尾だからな」
褐色の肌に映える艶の無い暗緑色の鱗。
腰に手を当て、深紅の髪をかき上げ誇らしげに犬歯を見せたセルが、逆さまに手招きする。
「さぁ、来いよ、ラフ。俺を楽しませてくれよな」
あからさまな挑発。
しかし、それに敢えて乗り、ラフが真っ直ぐセルに突っ込む。
勢いに乗って突き出されたラフの拳をセルが腕で払い退ける。
ラフの眼前に空いた隙間。
そこにセルが右手を叩き込む。
が、ラフの左肘がそれを跳ね上げる。
すかさず半歩飛びすさったセルの横腹に、ラフが蹴りを捩じ込んだ。
その右足をセルが捕らえようとする。
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