挑発

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 すかさず足を引き、ラフがセルの左腕をかわす。  次の瞬間、セルの尾が目にも留まらぬ速さでラフの右側面を打ち据える。  吹っ飛ぶラフ。 「がっ!?」  しかし、苦悶の声を上げたのはセルだった。  硬い鱗で覆われた尾から、真っ赤な血が流れ出てる。  苦痛に歪むセルの右目が、ラフの右手に握られたグルカナイフを捉えた。 「隠し武器か。咄嗟に俺の尾に切りつけるなんて、やっぱ、ラフ、面白ぇな」 「ぃっっ……ったく、ほんと、物騒な尾だよ。ガードしなきゃ、肋持って行かれるところだったぜ」  興奮を顕にするセルと、溜め息を隠せないラフ。  セルの尾に傷をつけ、肋と内臓を守った代償に、右腕はグルカナイフを握り締めるのが精一杯だ。  とは言え、セルも先程までのように自在に尾を振るうのは難しい。  力量技量は互角。  どちらもパワーファイターな分、一発のダメージは大きい。  防御や回避よりも攻撃に重点を置いたふたりの戦いは、互いの体力がどこまで持つかの不毛な消耗戦となりそうだった。 「長引きそうだな……」  スカイブルーの空を見上げ、ラフが小さく呟く。  しかし、運命の歯車は、誰も予期せぬ方へとその糸を紡いでいった。
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