12人が本棚に入れています
本棚に追加
すかさず足を引き、ラフがセルの左腕をかわす。
次の瞬間、セルの尾が目にも留まらぬ速さでラフの右側面を打ち据える。
吹っ飛ぶラフ。
「がっ!?」
しかし、苦悶の声を上げたのはセルだった。
硬い鱗で覆われた尾から、真っ赤な血が流れ出てる。
苦痛に歪むセルの右目が、ラフの右手に握られたグルカナイフを捉えた。
「隠し武器か。咄嗟に俺の尾に切りつけるなんて、やっぱ、ラフ、面白ぇな」
「ぃっっ……ったく、ほんと、物騒な尾だよ。ガードしなきゃ、肋持って行かれるところだったぜ」
興奮を顕にするセルと、溜め息を隠せないラフ。
セルの尾に傷をつけ、肋と内臓を守った代償に、右腕はグルカナイフを握り締めるのが精一杯だ。
とは言え、セルも先程までのように自在に尾を振るうのは難しい。
力量技量は互角。
どちらもパワーファイターな分、一発のダメージは大きい。
防御や回避よりも攻撃に重点を置いたふたりの戦いは、互いの体力がどこまで持つかの不毛な消耗戦となりそうだった。
「長引きそうだな……」
スカイブルーの空を見上げ、ラフが小さく呟く。
しかし、運命の歯車は、誰も予期せぬ方へとその糸を紡いでいった。
最初のコメントを投稿しよう!