第1章

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 娘が共稼ぎの時、一応人並みの手助けの孫育てをした時期があった。 未だ私も70歳代の若い元気な時だった・  孫は男子2人、長男孫は今23歳、次男孫は14歳の中2である。  私は今は88歳、孫の面倒を見るなど、とても「オヨビでない」と言う事だ。  丁度良い事に二人共自分の生活で一杯で呼ばない限りは寄り付かない。  けれど住いは同じなので孫の面倒を見て居た頃と同じで、一木一草は十数年前の出来事をアリアリと語ってくれる。  次男孫が1歳に満たない時、まだ暑い夏の夕暮れ、寝付かせようと夕日射す中をグルグル同じ道を歩き廻った。漸く寝付いてくれ、背中に掛かる重みがズシンとした時心に「愛しい」と言う気持ちが起こった。  長男孫が2歳半の頃、近所のプ-ルに連れて行った。 透明な青い水の中に可愛い水着の足が立っている。 元気なバァちゃんは飛び込んで足を掴んだ。  不意を突かれて彼はワァワァ泣き出した。  まさかこの位で泣くとは思わなかった私は笑いながら抱いて家に帰った。 矢張り「愛しい」と言う心が浮かんだ。  今彼らは夫々自分の生活で一杯、呼ばなければ顔を見る事も無い。 彼等がどんな成人になるか、どんな生き方をするか私は恐らく見る事は無いだろう。 第二次世界大戦を知っている私達は今となれば何故反対出来なかったかと思う。
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