第1章

4/7
前へ
/9ページ
次へ
 昭和2年生まれの私は、2・26事件から始まって日中戦争、真珠湾攻撃による第二次世界大戦突入、僅かな日本優勢からみるみる内の負け戦により、遂に 「無条件降伏」により奈落の底に落ちる と言う目まぐるしいばかりの20年を 思い起こす。  それまで単純に「日本は神国であり、滅びる事は無い」と信じて居たのであるから誠に物凄い「洗悩」であった訳だ。    あのギラギラと太陽の照る8月15日のラジオ放送によっていきなりその信仰から突き放された私達国民は、夫々の立場で、夫々の力で60年を生き抜いてきた訳である。  敗戦直後の日本は、つい先日まで「鬼畜米英」と教えられて来たアメリカの兵隊さんに飢えた日本の子供たちが「ギブ ミ- チョコレート」とねだり投げられた菓子を争って拾う悲しい光景を思い出す。  同年輩の日本の女性が青い目の米兵の腕に縋って歩く光景を見なければならなかった。  その屈辱感も当時の大人達は祖国日本を愛する共通の心で覆いかくして頑張った60年であった筈だ。  何時しか昭和20年8月15日直後の成人の隠れた「愛国心」は、豊かになると共に何時しか消えて行った様に思う。  情報機器の発達・医学の発達で一見幸せな社会に皆生きている。  然しあの「プライド」を捨てさせられた中でも、只管頑張り抜いたあの時代の「日本人」の 隠れた愛国心を今の若い人が持って居てくれるのだろうか。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加