3贖罪と回帰の巫女

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  一歩、洞窟の内部に足を踏み入れると、ひんやりと湿った潮臭い空気が肌に纏(まと)わりつく。 暗幕を垂れたように薄暗くなる視界の先、古びた石造りの大きな祠(ほこら)が、洞窟の裂け目から差し込む鋭い光を躱すようにして、その影にひっそりと佇んでいた。 目を凝らすと辺り一面、名前も知らない半透明な生命体で溢れ返っているのが視える。自ら光を放つもの、暗闇の隅に潜むもの。ふわふわと辺りを漂うもの、岩壁や地面を這うもの。慣れない者が視たらその通力(つうりき)に当てられて失神するほど密度の濃いマウラが、岩窟(がんくつ)の内部を満たしている。 街じゅうのマウラと通力が集まる場所。この世ならざる世界の裏側、『真裏(まうら)』との境界が、曖昧(あいまい)な場所。街の人々からは『御影の祠(みかげのほこら)』と呼ばれるこの場所に、僕の生きる意味をひとまず満たし得るものが存在している。  
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