3贖罪と回帰の巫女

4/38
前へ
/38ページ
次へ
「……」 虚ろな瞳が僕を捉えて、薄い唇が僅(わず)かに動く。ひか、る。いつも僕の名前を呼ぶように見えるのは、気のせいじゃないと思う。僕がそう思いたいだけかもしれないけど、でも、確かにそんな風に見えることにほんの僅か、胸の内に小さな熱が灯るのを感じる。 そして、僕と真浦の交流は終わる。 たったこれだけ。これだけのために、僕は他の生き物から命を抜き取っている。死体を持ち帰っては家の庭に埋める。だって真浦の命を繋ぎとめることが、僕の生きる意味なのだから。そのためなら、どんなことだってするって約束したから。 僕は真浦の隣に腰を掛けて、膝を抱いた。いっそ僕の御霊虫を全部渡したら、もう少し喋ってくれるだろうか。そんな切望が淡く、泡沫の如く浮かんでは消える。いつかそれを試して死ぬのも悪くはないと思っているけど、何となく踏ん切りがつかないでいる。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加