第2章

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 頬を擽る柔らかい感触に、ふわりと意識が浮上する。心地好い目覚め。でもなんだろう。少し暑い。 「おはよー」  耳に好い低い声…… 「! 琥珀!」  人型の琥珀が俺を抱き締め、顔を覗き込んでいる。ウェーブのかかった長い黒髪が、俺の頬を擽っていた。  額に手を当てると、やはり少し熱い。 「おはよう、琥珀。また熱が出たな。ちょっと待ってな」  額に冷却シートを貼って、琥珀の服を出す。ちゃんと琥珀の体格に合ったTシャツとジャージだ。  服を着た琥珀は、床に寝ずに俺の腰にしがみ着いてくる。 「今日も仕事か?」 「今日は土曜日だから、仕事は休みだ。一日中一緒にいるから、安心して寝てな」  不安げな顔が安堵に緩み、琥珀は床に寝転がる。 「一緒。一緒……」  にへにへと顔を緩めて呟きながら、うとうとしだした。  平日の内に溜まった洗濯をしながら、眠る琥珀の様子を窺う。  時折寝返りをしている顔を覗く。冬眠前より少しシャープになって、ほんの少し大人びた感じがする。 「やる事はまだ子供っぽいのにな……」  思わず頭を撫でたくなった手を引っ込める。起こさないようにしないと。  夜になり夕食を用意すると、床に寝転がっていた琥珀がスンと鼻を鳴らし、体を起こした。 「ご飯……?」 「夕飯だぞ。食べれるか?」 「ん……食べれる……」  ズリズリと床を這ってきて、テーブルに顎を乗せる。  その額の冷却シートを剥がして、首筋に手を当てる。 「まだ少し熱があるな。ご飯、残して良いから、食べ過ぎないように気を付けてな」  夕飯後にもう一度冷却シートを貼り、俺の寝る支度をする。 「今日も一緒に寝る~」  琥珀は俺より先に布団に潜り込んだ。 「暑くないか? 布団被んなくても良いぞ」  案の定、琥珀は布団を引き剥がすが、暖房を効かせているとは言え、やはり俺にとってはまだ布団の必要な季節だ。俺の被った布団の上に、琥珀は寝転ぶ。  俺の顔を覗き込み、にまにま笑う琥珀に眠気はないようだ。それでも俺は眠たい。  昨年も、琥珀は俺の寝顔を大人しく眺めているだけだったから、したいようにさせて、俺は眠りに入った。  翌朝、琥珀の体温が平熱に戻ったので、部屋の掃除をする事にした。  昨日は床に寝転がっていた琥珀をベッドに追いやり、部屋を片付け掃除機をかける。
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