第2章

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 平熱に戻ったものの、冬眠明けで本調子でないからなのか、もしくは夜行性の習性だろう。ベッドの上で琥珀はうとうとしている。  昼食を終えた後、特にやる事がなくなった俺は、床に座ってベッドに寄りかかり、適当なテレビ番組をつけた。  夕方になり、ふと気付くと、琥珀が目を開いて体を小さく震わせていた。 「琥珀? どうした? 具合悪いのか?」  顔を覗き込むと、異様な光を帯びた目に見返される。 「信之……俺、俺……」 「わぁっ……」  琥珀は俺の体をベッドに引き摺り込むと、手足を使って力一杯俺を抱き締めた。 「う……い、つ……」  呻き声すらもろくに出せない。 「あ……ごめん」  俺の状況に気付いた琥珀は、少し手足を緩めるが、依然抱き締めたままだし、体の震えも止まない。 「信之……交尾したい」 「はあ!?」  思いもしなかった琥珀の言葉に、俺の声がひっくり返る。 「ま、まさか俺と?」  間近にある琥珀の頭が縦に揺れる。 「待て、待て! 俺もお前も男だ。いや、雄か。いや、あの、だから、ショップに連絡して雌を探してもらうから、ちょっと待て」  もがいて琥珀の体を引き剥がそうとしても、その手足は頑として緩まない。 「嫌だ。雌なんかいらない。俺は信之と交尾したいんだ」  琥珀の瞳が俺を射抜く。 「信之と一緒にごはんを食べた時から決めてた。信之と交尾をする、って」 「な……なん、で?」 「信之はちゃんと俺を見てくれた。ちゃんと俺に触ってくれた。そんな相手は初めてだったんだ」  真剣な眼差しに反論出来なくなる。 「信之も俺を好きなんじゃないか? 寝る時、俺がぴったりくっついても嫌だって言わなかったし、よく眠れてた。それに俺が冬眠する時、本当に寂しそうだった」  確かにその通りだ。  誰かに触れて欲しくて合コンなんて出たけど、琥珀じゃないから嫌になったんだ。琥珀が冬眠から目覚めて久し振りに添い寝した時、漸く飢えが満たされた気がした。  でも、これは恋愛感情なのか? 家族愛のようなものじゃないのか?  俺が悩んでいる間に、琥珀がもぞりと動いて俺の頬を両手で挟んで持ち上げたかと思ったら、顔が近付いてきた。 「うひっ!」  琥珀の器用な舌が、俺の首をねろりと舐めた。次いで、顎先やら鎖骨やら、首周辺をあちこち舐めだす。 「ちょっ……ま、待てって」
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