第2章

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「信之! 信之! 大丈夫か?!」  琥珀がひっきりなしに、俺の頭や頬を撫でてくる。 「信之! ごめんなさい。俺、俺……」  俺がうっすら目を開けると、狼狽えた琥珀が、両手で頬を挟んで目を覗き込んできた。 「……今……何時?」  酷くしゃがれた声に、琥珀が携帯電話の時刻表示を見せてくれる。  Mon AM6:57  セーフ。まだ出勤時間じゃない。でも、身を起こすどころか、腕だってまともに上がらない。  年度末で忙しい時期だけど、今日は出勤出来る状態じゃない。 「8時に起こせ。それまで添い寝しろ」  なんとかアラームをかけて、琥珀を隣に呼び寄せる。低い体温に、心地好い眠りに誘われた。  酷い声のお陰で、病欠はあっさり納得された。 「信之……ごめんなさい。……俺、こんなになるなんて知らなくて…………えっと……俺とスルの、もう嫌?」  ベッド脇に座り込んだ琥珀はすっかりしょげている。 「まず、水、飲ませろ」  俺の指示に、ワンコよろしく琥珀はキッチンにすっ飛んで行き、すぐに引き返して来た。  コップ1杯では足らず、3杯飲んで漸く落ち着く。  体を支えてもらっていたけれど、腰がガクガクでどうにも動けない。 「嫌じゃない。けど! またすぐに、ってのは無理だ。体がもたない」 「信之! 俺、嬉しい!」  感極まった琥珀が、俺を抱き締めキスを繰り返す。 「キスって気持ち良いんだな。初めて知った。あ、キスは大丈夫だよな?」  返事の代わりに頭を撫でてやると、嬉しそうに頬を緩めるが、俺はもう横になりたい。 「もう、もたない。寝かせてくれ。琥珀も一緒に寝ろ」  そう言うと、琥珀は頬を緩めたまま、布団の中に潜り込んできた。体中ベタベタカピカピしているし、シーツもグジャグジャだけど知った事か。今はひたすら体を休めたい。  日が沈んだ頃、漸く自力で起き上がれた。  既にシャワーを済ませた琥珀に指示を出し、シーツを交換して洗濯もさせた。 「腹、減った……」  さっぱりした体で、綺麗になったベッドに倒れ込む。  料理をする気にならないが、琥珀の事を考えると安易にデリバリーを頼めない。火や刃物は危険だからと、琥珀に料理を教えなかった事が悔やまれる。  一食分の冷凍鶏肉をレンジで温め、俺の夕飯は茶漬けで済ます。  食器の片付けを琥珀に任せて、再びベッドに倒れ込んだ。
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