第2章

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 終業後、石井が、主に向かいのデスクの先輩に笑い掛けながら、俺の方にやって来る。 「ほら、帰るぞ」  自分の荷物の他に、俺の荷物も抱えた石井が俺の腕を取る。  正直、石井の支え方や歩きは、俺の負担を軽くしてくれる。 「あのさ、俺、柏葉の状況が大体想像つくから、あんまり身構えるなよ。……これ、言っておいた方が良いかな。……俺、男と付き合っているんだ」 「は!? ――っ!」  驚いた拍子に、腰に激痛が走る。 「あぁ、悪い。驚いたよな」  俺の胸に腕を回して支えつつ、石井が腰を軽く指圧すると、少し痛みが和らいだ。 「家に帰ったら本格的にやってやるから」 「あ、あぁ、サンキュ……」  朝のラッシュ時程ではないけれど、やっぱり電車の揺れが堪えた。  なんとかたどり着いた部屋の鍵を開けると、中から扉が開いた。 「お帰、り……誰? そいつ」  出迎えた琥珀の機嫌が急降下する。いや、これは威嚇モードだ。 「大丈夫だから。威嚇すんな。会社の同期だ」  手を伸ばして、今にも牙や先の割れた舌が覗きそうな口を慌て塞ぐ。  ……また腰に痛みが走った。  石井を見ると、目と口をあんぐり開けている。 「外国人……」 玄関でいつまでも三人でいるのはまずい。取り敢えず、中に入ってもらった。 「柏葉の同期で、石井と言います。気にしないでくださいね。柏葉には特別な感情はこれっぽっちもないので。あ、ところで、日本語大丈夫ですよね?」 「"どうき"ってなんだ」 「同じ年に会社で働き始めた仲間だ。石井、こいつは琥珀。日本語は大体大丈夫だと思う」 「コハクさん……ふうん。じゃ、柏葉、早速ベッドに横になれ。あ、ネクタイやベルトは外せよ。シャツのボタンも上の方は外せ」  俺に指示を出しながら、石井も準備をしている。  ぐるりと部屋を見渡し、ベッドについては言及しないでくれたが、俺の背中や腰をマッサージしながら、痛い所を質問してきた。 「なんかでっかいケースがあるけど、何か飼っていたのか?」 「あ、うん……今は、ちょっと……」  言葉を濁すと、上手い具合に勘違いしてくれたらしい。 「あ、ごめん。突っ込んだ事聞いて。悪かった」  ペットロスだと思われたかも知れないが、それならそれで、都合が良い。まさか、今目の前に居る男がそうだった、とは言えない。 「コハクさんはいくつ? 出身は?」
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