眠りに口付けを

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 廃部間近とまで言われる演劇部は、少ない部員数でもなんとか劇を行ってきた。  性別など関係なしに実力で役を決めることが基本的に多い。だが、時には脚本を書く人物が役を決めることもある。そして、じゃんけんやくじ引きで決定することもあった。  今回、指名された美羽(みう)は大きな瞳を丸くして、主役になれたことを喜んだ。  彼女の相手役は演技力が部内で一番の真咲(まさき)先輩。すらりとした長身に短い髪がよく似合う先輩は、身長が低く幼く見えることが多い美羽には憧れの人物である。 「私が相手役で本当にいいの? 別に男装するのは平気だけど……美羽ちゃんは他の相手が――」  愛らしい見た目の少女は、聞こえた言葉に慌てて首を横に振った。 「いいえ! 私、真咲先輩が相手役じゃないといやです!」  文化祭という大きな舞台に向けて、演技の練習は自然と熱が入る。周りから誉められても美羽は自分の演技に納得ができなかった。  もうすでに本番まで時間はない。といっても、本番直前まで練習漬けだと疲れが取れないと羽を伸ばすために部活は本日休みである。
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