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「へぇ、占いだけにしようと思ったら、予知のほうも出ちゃったわ。貴女運がいいね! そうわかったわ。エフィス、この先あなたの前に強大な闇が現れるわ。でもね、その闇を嫌わないで、その闇を闇の中に還さないで。もし還してしまったら、取り返しのつかないことになる」
彼女の挙動に気圧されながらも、その言葉を反芻するように聞き入ってしまう。
「強大な闇?」
「そう、闇。それはあなたの力になってくれるはずだから」
「力にって」
「私の力ってのは断片しか見えないしね。そう正確なことまで把握できないから、これくらいしか言えないわ。そもそも、自分でもあんま制御出来てないから」
そう笑いながら彼女は言った。
「まぁ、一言言えるのは、私は巻き込まれる前に退散するってことかな?」
言っていることが、どんどん物騒な事になっているような気がしてならない。巻き込まれる? 退散? なにが起きるというのだ。
「それじゃ、連れもいるからそろそろ行くわ。じゃあね、エフィス・ハウラー」
「え?」
名字まで教えてはいない。なのに?
驚き、マナが行った方を探るが、彼女の気配が捕まらない。まだそんな距離が離れているわけがないのに、彼女の存在を感知することができなかった。
「な、なんなの?」
一瞬、幻かと思いたかったが、確かに彼女の気配は覚えている。気がつけば、カラクの音色も止まっていた。
「連れが失礼したみたいだねぇ」
それは後ろから聞こえた。
マナを探すのに気を取られて新たに近づいてくる気配に気付くのが遅れた。
いつの間にか、すぐそばまで若い男が来ていた。
「連れですか?」
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