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「そっ。今話してただろ? あいつ失礼なこと言ってなかったかい?」
と言うことは、やはりマナは幻などではない。
軽いノリでしゃべりながら、男は火酒の入ったジョッキを煽っていく。
「まぁ、そんなことよか。一人でこんな外れに来てるなんて、祭りを楽しんでないのかい?」
「騒がしいのは少し苦手なんですよ。でも、楽しいですよ?」
「そりゃ、よかった。にしても、こんな寂れたとこなのに、盛大な祭りをやるもんだな。休暇がてら、いろんな所に足を伸ばしてみるもんだぜ」
「休暇?」
そう言えば、ハウェイが言っていたラフィルギルドの楽師も休暇中だと言っていた。
「おう、俺がその楽師だよ。なんだい? ラフィルの連中はみんなお堅い連中ばっかだと思ってたのかい?」
さもおかしそうに男は笑った。
彼の言う、お堅いという印象は世間一般に広まっているイメージとしては間違ってはいないはずである。現に、ラフィルギルドの本拠地があるヴァルベルト国首都ディフェサブルでよく見かけたギルド員達はイメージ通りであった。
「そりゃ、伝統と格式を重んじるのがウチのギルドだがねぇ。実際多いぜ? おかたぁい連中はよぉ。でもな、たまぁに、俺みたいな軽い奴もいんだよなぁ」
軽薄そうに彼は言う。
「お嬢さんは、こんなとこに何をしに来たんだい?」
「私は………」
「こんななんもないとこに出向くなんざ、なにかあると思うのが普通だろ?」
愉快そうに男は笑いながら言った。
「私は、この辺りに遺跡があるという話を聞いたの」
「遺跡………ねぇ。それじゃなにか? おめぇさんはトレージャーハンターとかそう言う類の人間かい」
「そういうわけじゃないけど」
「ふぅん。まぁ、いいけどねぇ」
それ以上は興味がわかなかったのか、彼は誰かを捜すように視線を巡らせている。
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