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いつの間にか、彼女のそばに歳の近い娘がいた。
「あなたは、あの中に加わらないの?」
祭りの熱は未だ冷めず、まだまだ中央の炎のように燃え上がっていっている。
「私は、ああ言うの苦手だから………」
「そう。私は結構好きだけどねぇ」
彼女はそう言い、持っていた火酒を煽っていく。
「ま、ちゃんと目も見えてなければ、それもしょうがないっか」
「………え?」
アルコールが少し回り出した頭はすぐにその言葉に反応することが出来なかった。
「ちゃんと見えてないんでしょ?」
「え、あ………そうだけど」
こんなに早く見破られたことはない。彼女が驚くのも無理はない。それに見破られるような行動はまだ起こしてもいない。この娘は一体………?
「私は真名よ。職業は………なんだろ。刻見……まぁ占い師みたいなものね」
「私はエフィス。旅をしてるわ」
「そう、エフィスって言うんだ。いい名ね。お近づきの印に、一つ刻を見てあげる」
そんなこと頼んでないのに、とこぼしそうになる。とはいえ、こぼしたところで彼女はそれをやめるとは思えないが。
「へぇ、面白いわね。刻がまた動いてる………闇が落ちてくる。深い闇のなかにもがく………光? ちがう」
そう言った瞬間、マナの体が小刻みに震えた。
彼女の異変に眉をひそめた瞬間、それはかすかに聞こえてきた。
"闇すら燃やし尽くす黒き炎を従えて、彼の者異邦より舞い降りる………"
擦れるように絞り出されたその声に一瞬、エフィスの思考が止まった。
エフィスには、マナがしゃべっている意味が全く理解できない。彼女の異変は一瞬で終わり、彼女は今のことがまるでなかったかのように話し出した。
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