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琥珀色の水がコップへ、なみなみと注がれていく様子にドキドキした。そんなオイラの様子なんてお構い無しに、ねぇちゃは美味しそうにごくごくと呑んでいく。
「ふぅ、美味しい」
姉ちゃを止める事が出来ないので、隣に座って黙っていた。
兄ちゃ、早く帰ってきてくれ。このままだと姉ちゃが、壊れてしまうかもしれない。
オイラの心配を他所に、注いでは呑んでを繰り返す。時折オイラの頭を撫でたりした姉ちゃ。顔がすっごく赤くなってます。
気がつけば、瓶の中の水はなくなっていた。
フラフラしながら空の瓶を持って立ち上がり、台所に向かう。ゴミ箱の傍に瓶を置いてから、冷蔵庫を開けて、また似たような瓶を取り出した。
「にゃ」(また呑む気じゃ)
瓶の蓋に何かを突き刺してクルクル回し、スッポンと開けた。さっきまで使っていたコップに、赤い色の水が注がれていく。そして一口呑んで、ため息をついた。
「ん、美味しい」
「にゃ~」(もう止めよう)
「全く……八朔は食い意地、はってるんだから。これはお酒だからあげれないよ」
「にゃん、にゃ」(いらないにゃ)
オイラは椅子から下りると、さっき姉ちゃがゴミ箱の傍に置いた瓶に手をかけて、ガコンと倒した。かなり大きな音がしたのにも関わらず、姉ちゃはぼんやりしながら、黙々と呑み続けている。
変わった形の瓶なので、転がすのには苦労した。少しずつ玄関の方に誘導すべく、頭や体を使って押して進ませる。
この非常事態を帰宅するであろう兄ちゃに、いち早く知らせたかったのにゃ。
ちょうど玄関から見えそうな位置に移動出来た時、玄関の扉が開いて兄ちゃが帰って来た。
「にゃあ、にゃん」(遅い、大変な事になってる)
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