意外な一面:新婚生活危機編

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 瓶に前足をかけて一大事をアピールしたオイラに、兄ちゃは玄関で固まった。じっと見つめ合う、兄ちゃとオイラ。 「八朔、そのブランデーの空瓶をどこから持ってきたんですか? 確か戸棚の奥にしまってあったと、記憶しているのですが」 「にゃあにゃあ、にゃん」(姉ちゃが呑んだにゃ) 「まさかとは思いますが、ひとみが全部、呑み干したんですか?」  オイラは右前足で、瓶をパシパシ叩いた。兄ちゃは慌てて腕時計を見る。 「俺が出掛けてから、大体一時間とちょっと。かなりなハイペースで呑んだな」  持ってた荷物を玄関に置いて空瓶を掴み、リビングに向かう兄ちゃと一緒に入って行った。 「ひとみ大丈夫ですか? って、赤ワインまで開けてるんですか!?」  兄ちゃが慌ててテーブルに置かれていた瓶を、姉ちゃから取り上げる。 「何するんですかっ、呑みたい気分なんですから呑ませて下さい」 「君はお酒弱いんですから、もう止めないと具合が悪くなってしまいますよ」 「放っておいて下さい。具合悪くなろうが、正仁さんに関係ないでしょ」  テーブル上で瓶の取り合いをする二人に、ハラハラする。何とかしたい――今、自分の出来る事って何だろ?  普段やったら怒られるテーブルに上がって、瓶を持つ姉ちゃの手を、迷うことなくガブリと噛んだ。 「痛っ! 八朔何するの」 「にゃあ」(いい加減にすれよ) 「八朔までなんで、私を止めようとして腕に爪たてるの?」 「にゃにゃにゅにゃ~」(姉ちゃが分らず屋だから~) 「八朔すみません、ひとみがこんな風になったのは、俺のせいなんです。痛い事を止めてあげて下さい」 「にゃあにゃん」(兄ちゃ)  オイラが前足を姉ちゃから放すと、二人が瓶をテーブルに置いた。
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