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「ずっと寂しかったんですよね?」
姉ちゃが一歩前に出た瞬間、オイラはテーブルから兄ちゃの胸の中に迷わず飛び込んだ。
「にゃんにゃ~」
「――八朔、君も寂しかったんでしょうけど少しの間、我慢して下さい」
兄ちゃは顔を引きつらせながら、オイラを床に置いた。
「肝心なトコで、のろのろしているから捕られるんですよ」
「正仁さんに、言われたくありません」
「そうですね。じゃあ」
ふくれている姉ちゃを兄ちゃがぎゅっと抱き締め、耳元で静かに呟く。
あれ? 姉ちゃの耳に、ピカピカ光るお花が付いてる。
「彼女が付けていたピアスに、君を重ねてつい見つめてしまいました。だけど想像以上に、似合ってますよ」
「彼女を見つめてたんじゃなく、私を?」
「いろいろ、タイミングが悪かったですね」
「正仁さんが、紛らわしい事をするのがいけないんです。どれだけ私が悩んだかっ」
怒っている姉ちゃの頭を、宥めるように撫でた。
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