5人が本棚に入れています
本棚に追加
すなわち何が最善なのかは、私にもワカラナイのだ。
獲物になる被害者の抵抗こそが、最善でないとは限らない。
ともあれ朝食まで、あと一時間しかない。
解体以外の調理が必要ないからといって
時間を無駄にするのは好きじゃないし
家風でもない。
我々には別の種族としての本質がある。
身に纏うのは隠蔽ではなく、利便性でしかない。
故に時間による自己拘束を厭わない。
シキタリ。
曇り空や雨の日は体調がズレている事がある。
具合が悪いとかではなく、眠ったまま動いてるような
そういう気持ちが、陽が高くなるにつれて憂鬱を押し付ける。
実際の天候は無関係で、実際の星の方が身近なのだろう。
1度だけだが、狩りの真っ最中に眠ってしまった事さえある。
執事の男が同行していなかったら、危険という体験を
したのかもしれないが、いまとなっては不明である。
門をでる。
以前、吸血鬼という架空の怪物が登場する本を読んだ。
私は人間が演じる映像では観れない。
全てのキャストが餌にしか見えないから。
従って挿絵すら無い本を選んだ。
随分と不自由な存在らしい。
ユニークだったし、滑稽だった。
地域や時代でも変化してるようだが
開発途上国が先進国になったり、また貧困に身を窶すのと
大差は無いような気がした。
この雨だとか、雲っていても然り晴天なら尚更に
苦手とするとも書いてあった。
こういう安全策を記しておきたがる、
人間の臆病は、狩る時に有用な事も偶にはあるが
一部の人間による勝手な、ゲームルールでは
ニンニクやら十字架なんかにも弱い場合もある。
最終的には心臓に杭を打たれ、遺体は残すという物を読んだ。
興味深かったのは、唯一、私達の一族との共通点、
「銀の弾丸」への記述のあった事だ。
さて、誰が確かめたのだろうか?
いずれにせよ生死の境で、起こる出来事も
その時の脳裏をよぎる感覚も、何が世に読み戻すかも
私たちは知りえる術が無い。
狩りをして、食べ、人間より少し長い時間を過ごして死ぬか
単に私自身が獲物として、先に消えるかそれだけだ。
わたしは纏ったグレーのドレスを、翼のように翻す。
返り血は生身により近い温度で受けよう。
全身に狼の毛を鋭い針のように伸ばす。
牙が巨大化し、私は「銀の犬」となる。
食う為に従う犬。
世の人間は私のような一族を
「狼男、狼女?(魔女かも知れぬ)」などと呼ぶらしい。
最初のコメントを投稿しよう!