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朝7時、屋敷内を一瞥して歩く。
下女が深く礼をして、仕事へ戻っていく。
執事の男は「狩り」に同行するかどうかを
毎日確認してくる。
つまり、後始末と獲物の運搬を示している。
普段ならば当然、無駄なく有用に仕事を任せるが
良くない日
というクリーンな気持ちになる事があるのだ。
そういう日には犬歯が欠けたり、耳慣れない音楽が聴こえる気がしたり、
血塗れのドレス姿を路地裏で目撃された事もある。
その日は被害者、目撃者を装って、病院から脱出した。
こういう時、執事の男は常に自家用車を待機させている。
すなわち何が最善なのかは、私にもワカラナイのだ。
獲物になる被害者の抵抗こそが、最善でないとは限らない。
ともあれ朝食まで、あと一時間しかない。
解体以外の調理が必要ないからといって
時間を無駄にするのは好きじゃないし
家風でもない。
我々には別の種族としての本質がある。
身に纏うのは隠蔽ではなく、利便性でしかない。
故に時間による自己拘束を厭わない。
シキタリ。
曇り空や雨の日は体調がズレている事がある。
具合が悪いとかではなく、眠ったまま動いてるような
そういう気持ちが、陽が高くなるにつれて憂鬱を押し付ける。
実際の天候は無関係で、実際の星の方が身近なのだろう。
1度だけだが、狩りの真っ最中に眠ってしまった事さえある。
執事の男が同行していなかったら、危険という体験を
したのかもしれないが、いまとなっては不明である。
門をでる。
以前、吸血鬼という架空の怪物が登場する本を読んだ。
私は人間が演じる映像では観れない。
全てのキャストが餌にしか見えないから。
従って挿絵すら無い本を選んだ。
随分と不自由な存在らしい。
ユニークだったし、滑稽だった。
地域や時代でも変化してるようだが
開発途上国が先進国になったり、また貧困に身を窶すのと
大差は無いような気がした。
この雨だとか、雲っていても然り晴天なら尚更に
苦手とするとも書いてあった。
こういう安全策を記しておきたがる、
人間の臆病は、狩る時に有用な事も偶にはあるが
一部の人間による勝手な、ゲームルールでは
ニンニクやら十字架なんかにも弱い場合もある。
最終的には心臓に杭を打たれ、遺体は残すという物を読んだ。
興味深かったのは、唯一、私達の一族との共通点、
「銀の弾丸」への記述のあった事だ。
さて、誰が確かめたのだろうか?
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