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しかし、ここで電話やメールしようもんなら、彼女たちへの格好の餌だ。
「実家に帰ってるから夜に電話してみるー」
適当なことを言って、逃げるように教室を出た。
心配ないワケないじゃんね。
友人たちと離れて、裕二のケータイを鳴らしてみた。
オキャクサマノデンワハ タダイマ デンゲンヲキラレテイルカ デンパノトドカナイトコロヘ……
ヤな胸騒ぎ。
自分の部屋へ帰ろう。
「ただいまー」
ゴロゴロゴロ
MEDAが足元まで転がってきた。
●を表示。?をたまに表示。まばたきのつもりか。構わず単刀直入に、
「裕二どこか知らない?」
と尋ねてみた。
すると、MEDAは転がってリビングの中央へ行くと、球体全面に地図を表示した。
あたしはMEDAを抱きかかえて、その地図を読んだ。赤い点がある。おそらくそこに裕二は居るんだろう。
A県N郡R村……。
と、地図の表示は消えた。確認したくて、
「裕二はどこ?」
もう一度、尋ねてみた。
すると、×を表示。バイブレーションが1度、振動。何度訪ねても同じ。
ますます心配になるじゃないか。
やおら立ち上がり、クローゼットからリュックを引き出した。着替えなんか詰め込んで背負い、MEDAを抱えて家を飛び出した。
電車でどのくらいかかるんだ、A県N郡R村。今はわかるかそんなもの。駅まで歩いて電車に飛び乗り、スマホで路線検索してみた。
ずいぶん山奥で、最寄りの駅からタクシーで30分はかかるらしいことはわかった。
電車の中でずいぶんジロジロ他の乗客に見られてた。ハンドボールほどの大きさなMEDAは、そこそこ目立つし、かさばるし。
A県に入るまでの電車に乗ったところで終電となり、駅最寄りのビジネスホテルに一泊。そこから絵に描いたようなローカル線に乗り換える。みるみる周囲は山になる。
N郡R村に近い駅で下車。タクシーに急いでもらってR村へと入った。
タクシーを降りて細い道を歩く。田んぼに村民らしい老人を発見。
「すいませーん」
彼は、こちらにゆっくり歩いてきて「なんかね?」と尋ねるから、
「こんな白っちいイケメンを見ませんでしたか?」
と、電車の中で厳選しておいた、裕二が写っている画像を表示したスマホを突き出して見せる。
「あー……」
おじいさんは目を細めてアゴを上げてしばし画像を眺め、
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