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「裕二のバカヤロー!」
と。
MEDAが激しく振動しはじめ、前カゴから飛び出した。
そして、川のほうへ向かって落ちたかと思うと、パーンと爆ぜてしまった。
あの男、裕二のほうへ引き返すかしら?
しかし、バイクはあたしの横を通り過ぎ、砂埃を立てて消えてしまった。
裕二に問い質さないといけない。あたしは彼のいる家に戻った。
裕二はいなかった。
裕二はこうなることを予見して、あたしを山奥へまず呼び出し、このタイミングで遠くへ行かしたんだ。
脱力し、泣き崩れた。
*
部屋に戻る。
「ただいまー」
言ってしまった。
涙がこぼれた。
顔を上げると、目の前にMEDAがいる。
なんで?
2台のMEDAがあって、1台、家のどこかに巧妙に隠してあったのか。
MEDAには、裕二の手書きの手紙画像が表示された。
「これが起動したころ、1台目はキミのキーワードを認識して自爆しただろう。
ボクは必ず帰る。キミを守って、さらにMEDAを守るには、こうするしかなかった。ごめんね」
あたしは、笑ってるんだか泣いてるんだかわかんない顔で、力なくその場にくずれ落ちた。
新しいMEDAは、虹色に輝き、部屋中をコロコロ元気に転がってみせた。
きっと、慰めてくれているんだろう。(了)
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