球体はふたたび

7/7
前へ
/7ページ
次へ
「裕二のバカヤロー!」  と。  MEDAが激しく振動しはじめ、前カゴから飛び出した。  そして、川のほうへ向かって落ちたかと思うと、パーンと爆ぜてしまった。  あの男、裕二のほうへ引き返すかしら?  しかし、バイクはあたしの横を通り過ぎ、砂埃を立てて消えてしまった。  裕二に問い質さないといけない。あたしは彼のいる家に戻った。  裕二はいなかった。  裕二はこうなることを予見して、あたしを山奥へまず呼び出し、このタイミングで遠くへ行かしたんだ。  脱力し、泣き崩れた。     *  部屋に戻る。 「ただいまー」  言ってしまった。  涙がこぼれた。  顔を上げると、目の前にMEDAがいる。  なんで?  2台のMEDAがあって、1台、家のどこかに巧妙に隠してあったのか。  MEDAには、裕二の手書きの手紙画像が表示された。 「これが起動したころ、1台目はキミのキーワードを認識して自爆しただろう。 ボクは必ず帰る。キミを守って、さらにMEDAを守るには、こうするしかなかった。ごめんね」  あたしは、笑ってるんだか泣いてるんだかわかんない顔で、力なくその場にくずれ落ちた。  新しいMEDAは、虹色に輝き、部屋中をコロコロ元気に転がってみせた。  きっと、慰めてくれているんだろう。(了)
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加